男性に比べて、女性のほうが歯周病に悩む機会が多いということをご存じでしょうか。女性ホルモンには、ある特定の歯周病菌の増殖を促したり、歯周組織の炎症を悪化させたりする作用があります。女性ホルモンの分泌はライフステージによって変化します。女性特有の歯周病を理解しケアをしましょう。
1)女性に特有な歯周病 エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンは,月経や妊娠時などに増えたり減ったりしています。これらの女性ホルモンは血中を介して歯肉溝へと分泌され,思春期などにおいても,歯周病の原因となる細菌増殖を引き起こして歯肉に炎症を起こしやすい環境をつくると言われています。
2)妊婦の歯周治療 妊娠によりホルモンバランスの変化やつわりで口腔環境が変わり、口腔衛生管理が不良になると、妊娠関連性歯肉炎や歯周炎の発症や悪化が起こりやすくなります。お口の中の慢性的な炎症状態が原因となって、血液中に種々な物質が放出され、早産低体重児出産の頻度が高まる可能性も報告されています。妊娠初期はブラッシング指導を中心に,ストレスの少ない治療を行います。また、妊娠の安定期まで待って、より積極的な治療を行う場合もあります。また、妊娠中の投薬は極力避けて、セルフケアに加えて歯科医院でのプロフェッショナルケアを併用するのが良いでしょう。歯周病により妊娠中の抜歯が必要となった場合には,安定期を待って抜歯を行いますが、観血的処置はなるべく産後に行うのが望ましいです。歯周病は早産や低体重児出産のリスクファクターとなるため,妊婦に対しても適切な歯周治療が必要となります。妊娠期間中は処置が限られるため,日頃から口腔衛生管理をしっかり行うのがよいでしょう。
3)骨粗鬆症 女性ホルモンのエストロゲンは骨密度の低下を防ぐ役割をしています。更年期を過ぎるとエストロゲンが減少し、骨密度が低くなり、骨粗鬆症になりやすくなるため、歯を支える顎の骨も弱く脆くなります。ビスホスホネート製剤や抗 RANKL 抗体製剤は、骨粗鬆症治療によく使われています。ところが、ビスホスホネート製剤や抗RANKL 抗体製剤を投与されている場合には、抜歯などの外科的歯科治療を受けた後に、顎骨(顎の骨)の壊死が起こることがあって、これらの薬剤との関連性が示唆されています。
(参考文献 日本歯周病学会 歯周治療のガイドライン2022)
★定期的に歯科医院でケアを受けましょう
毎日の歯磨きで取り切れなかったプラークは、徐々に歯石と呼ばれる状態へと変化します。歯石を放置していると表面に更にプラークが蓄積し、歯周病が進行しやすくなります。ホルモンバランスによるお口の変化に対応できるよう、定期的に歯科医院に通い、プロフェッショナルケアを受けましょう。