■ 血管迷走神経反射とは
歯科治療中に、緊張や痛みなどが原因で一時的に気分が悪くなることがあります。これは「血管迷走神経反射」と呼ばれるもので、一般的に「脳貧血」として知られている状態に似ています。
歯科医院では比較的起こりやすい偶発症のひとつです。もし症状が出ても適切に対処すれば、ほとんどの場合は、しばらくすると回復します。過度に心配なさらないで、冷静に対処しましょう。
■主な症状
・気分が悪くなる、冷や汗が出る
・顔色が青白くなる
・めまい、立ちくらみ、頭痛
・吐き気、お腹の不快感
・視野がぼやける
・(重症の場合)一時的に意識を失う
■なぜ起こるのか
強い緊張や痛みを感じると、自律神経(交感神経)が一時的に過敏に反応します。その後、体がそれを鎮めようとして逆に副交感神経が急激に優位になることで、心拍数が下がったり血管が広がったりします。その結果、血圧が急激に低下し、脳への血流が一時的に不足することでこれらの症状が起こります。
■ 反射を引き起こしやすい要因
以下のような状況では、反射が起こりやすくなる傾向があります。
・心理的要因:歯科治療への強い不安や恐怖心、過去の嫌な経験。
・身体的要因:睡眠不足、過労、空腹、脱水状態、体調不良。
・痛みの刺激:注射の痛みや、治療中の突発的な痛み。
・属性:20代前後の若い方や、女性に比較的多く見られます。
■ 当院での予防策(安心して受診いただくために)
当院では、患者さんの不安を最小限に抑えるため、以下の対策を行っています。
・事前のカウンセリング:過去に気分が悪くなった経験がある方や、不安が強い方は事前にお知らせください。体調を見ながら、ゆっくりと治療を進めていきます。
・痛みに配慮した麻酔を行う。
①表面麻酔:針を刺す前に、粘膜に麻酔薬を塗って感覚を麻痺させます。
②極細の針:刺入時のチクッとした痛みを抑えるため、非常に細い針を使用します。
③ゆっくりとした注入:薬が入る時の圧迫痛を抑えるため、時間をかけて一定のスピードで注入します。
・体調管理のお願い: 前日は十分な睡眠をとり、体調は整えて、空腹の状態での来院は避けていただくようお願いいたします。
■ もし症状が起きてしまった時の対応
万が一、治療中に気分が悪くなった場合は、すぐにスタッフへお知らせください。迅速に以下の対応を行います。
・安静:ユニット(椅子)を水平に倒し、足を少し高くした状態で安静にしていただきます。これだけで脳への血流が改善し、多くの方は数分で回復します。
・モニタリング:血圧や脈拍を測定し、必要に応じて酸素吸入などを行います。
・治療の中止:安全を第一に考え、原則として当日の治療は中止いたします。
■ 回復後の対応について
症状が完全に治まったことを確認してから、お帰りいただきます。
もし、どうしても歯科治療への恐怖心が拭えず、通常の治療が難しい場合には、リラックスした状態で治療を受けられる「笑気吸入鎮静法」や「静脈内鎮静法」が可能な専門施設(大学病院等)をご紹介させていただきます。
■参考文献
・「歯科医院でおこなう偶発症予防と救命処置」 横山武志 著
