タバコと歯周病

タバコと歯周病の深い関係 —— お口の健康を守るために知ってほしいこと

 

日本歯周病学会によると、喫煙はお口の健康にとって「最大の危険因子」とされています。 なぜタバコが歯によくないのか、そして禁煙するとどんな良いことがあるのか、詳しく解説します。   

 

1. タバコを吸うと、どれくらい歯周病になりやすい?  

 

喫煙者は、タバコを吸わない人に比べて、歯周病にかかる危険度が 2倍から8倍 も高まると報告されています。また、喫煙本数が多かったり、喫煙年数が長くなったりするほど、将来的に歯を失うリスクは高くなります。   例えば、1日21本以上タバコを吸う方が歯を9本以上失う(残っている歯が20本以下になる)リスクは、吸わない方の約2倍あるそうです。実際に統計でも、喫煙者はご自身の歯が残っている本数が少ない傾向にあります。  

 

2. タバコが歯周病を悪化させる理由   

 

タバコの煙には、ニコチン、タール、一酸化炭素などの有害物質が含まれています。これらが次のように作用し、歯周病を悪化させます。 

 

•ニコチン:(病気のサインを隠してしまう) 血管を縮める作用があるため、歯ぐきの血行が悪くなります。すると、本来なら炎症で出るはずの「出血」が止まってしまいます。これを「マスキング効果」と呼びます。 「出血がないから大丈夫」と油断しているうちに、見えないところで病気が進行してしまいます。また、歯ぐきを修復する細胞(線維芽細胞)の働きも弱めてしまいます。  

 

•一酸化炭素:(免疫力を下げる) 酸素の運搬を邪魔するため、歯周病菌と戦うための免疫細胞の働きが低下します。これにより、細菌に対する抵抗力が弱まってしまいます。 

 

•タール:(汚れの原因) いわゆる「ヤニ」です。歯の表面に黒っぽくこびりつき、見た目を損なうだけでなく、プラーク(歯垢)や歯石が付きやすい環境を作ってしまいます。   

 

3. 受動喫煙もリスクになります   

 

タバコの影響は、吸っているご本人だけではありません。 ご家族や周囲の方の「受動喫煙」であっても、歯ぐきに悪影響を及ぼす可能性があります。研究では、タバコを吸わない方でも、受動喫煙の環境にある場合は、そうでない方に比べて重度の歯周病になるリスクが高まることがわかっています。 

 

4. 治療の効果が出にくくなってしまいます 

 

残念ながら、喫煙は歯周病の「治療の効果」も下げてしまいます。

 

•治療効果の低下: 喫煙されている方への歯周病治療の効果は、吸わない方に比べて40%〜80%も低くなるというデータがあります。

 

•治りの遅れ: 傷を治す細胞の働きが弱いため、治療後の回復が遅くなりがちです。

 

•成功率への影響: インプラント治療や、溶けた骨を再生させる手術においても、喫煙されている方は成功率が下がったり、トラブルが起きる確率が高くなったりします。 

 

5. 「禁煙」には大きなメリットがあります

 

ここまで怖いお話をしてきましたが、禁煙をするのに「遅すぎる」ということはありません。 禁煙は、お口の健康を取り戻すためのとても大切です。  

 

•短期間での改善: 禁煙を始めると、数週間で歯ぐきの血流が回復します。本来の免疫力が戻り、治療の効果が上がりやすくなります。

 

•将来のリスク低下: 禁煙を長く続ければ、歯を失うリスクは徐々に下がっていきます。長期間(例えば20年ほど)禁煙を続けた方は、タバコを吸わない人と同程度までリスクが下がることがわかっています。

 

•全身の健康と美しさ: 歯ぐきの黒ずみが消えて健康なピンク色に戻るほか、口臭の改善、味覚の回復など、生活の質も向上します。もちろん、糖尿病や心筋梗塞など、全身の病気のリスクも減らすことができます。

 

当院では、お口の健康を守るパートナーとして、患者さんひとりひとりに合わせた治療計画をご提案します。「歯周病が心配だ」「まずは検診だけ受けたい」という方も、お気軽にご相談ください。

 

参考文献

喫煙の歯周組織に対する影響

歯周治療における禁煙支援の手順書 

喫煙、禁煙年数と歯の喪失との関連について 

歯周病と禁煙チャレンジ