「噛む」ことについて

■食べ物をしっかりと噛むことは、食べ物を細かくして飲み込みやすくするだけでなく、脳や内臓など全身に関連する多くの良い影響があります。

 

1.  消化・吸収のサポート

 

食べ物を細かく噛み砕くことで、唾液と十分に混ざり合い、胃腸での消化・吸収がスムーズになります。これは、栄養を取り込みやすくするために必要なことで、胃腸への負担を減らすことにもつながります。

 

2.  肥満の予防

 

よく噛んでゆっくりと食事をすると、脳にある「満腹中枢」が刺激されます。満腹感を得やすくなるため、「まだ食べ足りない」と感じて必要以上に食べてしまうことを防ぎ、肥満の防止に役立ちます。

 

3.  脳の活性化

 

リズミカルに顎(あご)を動かす「噛む」運動は、脳への血流を増加させ、脳細胞を適度に刺激します。これにより、お子さんの脳の発達を助けるだけでなく、成人の集中力や記憶力、認知機能の維持にも良い影響を与えると考えられています。

 

4.  味覚の維持・発達

 

食べ物を口の中ですぐに飲み込まず、じっくりと噛むことで、食材本来の味や香りを感じやすくなります。これにより味覚が発達し、豊かな食生活を送ることができます。

 

5.  お口のまわりの機能維持

 

 噛むことは、お口のまわりにある筋肉(表情筋や舌)を使います。これらの筋肉を日常的にしっかりと使うことで機能が維持され、言葉の発音が明瞭になったり、表情が豊かになったりする効果も期待できます。

 

■「唾液」の重要な働きについて

 

よく噛むと、お口の中にある唾液腺が刺激され、唾液がたくさん分泌されます。この唾液には、さまざまな重要な効果があります。

 

1.  お口の中の洗浄と抗菌作用

 

唾液は、お口の中に残った食べ物のカスや細菌を洗い流す「洗浄作用」を持っています。また、唾液に含まれるリゾチームやペルオキシダーゼといった酵素には「抗菌作用」があり、虫歯菌や歯周病菌の過剰な増殖を抑える働きをします。

 

2.  虫歯を予防する「緩衝作用」と「再石灰化」

 

 私たちが食事をすると、お口の中は細菌が作り出す酸によって「酸性」に傾き、歯の表面のミネラルが溶け出しやすい状態(脱灰)になります。

 

唾液には、この酸性を中和し、お口の中を中性に戻そうとする「緩衝作用(かんしょうさよう)」があります。

 

さらに重要なのが「再石灰化(さいせっかいか)」です。唾液に含まれるカルシウムやリンといったミネラルが、ごく初期の溶け始めた歯の表面を修復し、歯を元の状態に戻そうと働きます。

 

3.  消化の促進

 

唾液に含まれる消化酵素「アミラーゼ」は、食べ物に含まれるデンプンを分解する最初のステップを担います。よく噛んで唾液と混ぜ合わせることで、その後の胃腸で消化しやすくなります。

 

■「噛む」ことを意識するために

 

最近は、パンや麺類、加工食品など、柔らかく食べやすいものが増え、「噛む」回数が少なくなりがちです。できれば、「いつもより多く噛むこと」を意識してみると良いと思います。回数にこだわりすぎる必要はないですが、まずはご自身のペースで、咀嚼(そしゃく)の回数を増やすことから始めてみましょう。

 

■まとめ

 

「よく噛む」ということは、唾液の分泌を促し、虫歯や歯周病のリスクを減らして、消化を助け、脳を活性化させます。お口の中の環境を整え、全身の健康を維持するために大切な役割を果たしています。