歯周病のリスクファクター

歯周病は、歯を支える組織(歯肉や歯槽骨)に炎症が起こる病気で、「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」と呼ばれていて、痛みが少なく静かに進行します。そのため、気づいた時には重症化していることがあります。この歯周病の発生や進行を高めてしまう要因を「リスクファクター(危険因子)」と呼びます。

 

 歯周病のリスクファクターは、大きく分けて「細菌因子」「宿主因子」「環境因子」の3つに分類することができます。

 

細菌因子:病気の直接的な原因

 

歯周病の直接的な原因となるのは、プラーク(歯垢)です。

 

プラークは、多くの細菌とその産生物から構成される粘着性の沈着物で、歯の表面にバイオフィルムと呼ばれる膜を形成して定着します。プラークの中には歯周病原菌が含まれており、特に酸素の少ない歯周ポケット(歯と歯肉の境目の溝)の中で増殖します。これらの細菌が毒素を放出することで歯肉に炎症を起こして、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてしまいます。

 

このことから、歯周病予防や治療の基本は、ブラッシング(歯磨き)によってこのプラーク(歯垢=細菌因子)を取り除くこと、つまりプラークコントロールが中心となります。

 

宿主因子:体の状態や口腔内の環境

 

宿主因子とは、患者さん自身の「局所的(お口の中)な状態」や「全身的な状態」に関わる因子です。

 

A. 局所的因子(お口の中の環境)

 

これらはプラークが溜まるのを助長したり、炎症を増悪させたり、歯の動揺を増加させる要因です。

 

①プラークが溜まりやすい環境(プラークリテンションファクター)

 

    ・歯石:プラークが唾液中の成分で固まったもので、表面に細菌が住みつき、さらにプラークを増殖・悪化させます。

 

    ・歯列不正:歯並びに問題があると歯磨きが難しくなりやすく、プラークが溜まりやすくなります。

 

    ・不適合な修復物:歯に合わない詰め物や被せ物などの周囲にプラークが溜まりやすくなります。

 

    ・歯の形態異常: 歯の形態の膨らみや窪みにプラークの溜まりやすいことがあります。

 

② 炎症を悪化させる因子

 

    ・口呼吸:口の中が乾くことで、唾液の持つ抗菌作用が働かなくなるため、細菌が活発になって炎症が強くなります。プラークも溜まりやすくなります。

 

    ・食片圧入:食べ物が歯の間に挟まり続けると、細菌が増えて炎症が強くなります。

 

③外傷性因子

 

    ・歯ぎしり、食いしばりなど:歯ぎしりや食いしばりそのものが歯周病を引き起こすわけではありません。歯周病が進んでいる歯に、歯が揺すらされるような力(ジグリングフォース)が加わることで、歯根膜腔(歯の根の周りにあるクッションの役割を果たす組織)が拡大して歯の動揺が大きくなると考えられます。また、歯周ポケットにプラークがあって、ジグリングフォースから逃れられない場合は歯周組織と歯槽骨の両方が失われると考えられます。

 

B. 全身因子(体の状態)

 

全身の状態や疾患も歯周病の発生や治癒に大きく関わります。

 

①全身疾患

 

    ・糖尿病:歯周病と糖尿病は互いに深く関係しています。糖尿病の方は、歯周病になりやすく悪化しやすいことがわかっています。逆に、歯周病があると血糖値を下げるインスリンの働きが悪くなる(インスリン抵抗性)ため、糖尿病も悪化しやすくなります。歯周病は糖尿病の合併症の一つとされています。

 

    ・その他の疾患:ヒト免疫不全ウイルス感染、白血病など

 

②加齢・遺伝

 

    ・年齢:歯周病の患者さんの割合は年齢とともに増加します。年齢そのものが歯周病を悪化させるというより、年齢とともにこれまでの生活習慣の影響や全身状態の変化や、ブラッシングが徐々に難しくなることなどによるものと考えられます。

 

    ・遺伝的因子:歯周病そのものは遺伝しませんが、特定の体質や遺伝的要因によって、歯周病にかかりやすくなる人がいると報告されています。

 

③ホルモンの変化

 

    ・妊娠:妊娠中の女性はホルモンの影響で歯肉の炎症が起こりやすくなります。

 

    ・閉経前後:歯肉の炎症(慢性剥離性歯肉炎)が起こりやすくなります。

 

環境因子:生活習慣

 

環境因子とは、普段の生活で行われているる習慣や要因です。

 

① 喫煙

 

    ・喫煙は、歯周病の発症や進行に影響を与える最大のリスクファクターです。受動喫煙や電子タバコも影響を及ぼします。

 

    ・タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、歯肉への血行不良を引き起こし、歯周組織の抵抗力を低下させます。また、歯肉からの出血を抑えたり、硬くしたりすることで、症状が気づきにくくなりますし、治療後の治りも悪くなります。

 

②ストレス

 

    ・精神的なストレスにより体の抵抗力が弱まったり、生活習慣(歯磨き、喫煙、食生活)が乱れたりすることで、歯周病が悪化しやすくなります。

 

③食習慣・栄養

 

    ・栄養障害:ビタミンC・D、カルシウムなどの不足は歯周組織の抵抗力を弱めます。

 

    ・高糖分・粘着性の高い食品:プラークを形成する細菌の活動を助長します。不規則な食事や偏った栄養も悪影響を与えます。

 

これらのリスクファクターを取り除くことができれば、歯周病になりにくくすることができますし、改善することができると思います。

 

現在歯周病にかかっている場合は、まずは歯科医院で検査を受けて自分自身の状態を正確に把握し、治療を行うことが必要です。プラークコントロール(適切な歯磨き)を行って、禁煙や食習慣の改善、ストレスの解消 など、生活習慣を見直してリスクファクターを減らすことが、歯と全身の健康を守ることに繋がります。

 

歯周病は再発しやすい病気ですので、治療が終わった後も、かかりつけの歯科医院で定期的にチェックとメインテナンスを受けることがとても大切です。